合宿の特訓
「特別訓練教官のツナ軍曹である!」
ゴールデン・ウィーク、私立天陵学園の合宿所を借りたチームワーク特訓が始まった。
頼光が『後は任せたから』と言って合宿所を出ていくと 。
何故かツナは軍服に着替え、四人の魔王軍 ルキフェル、レジーナ、レオ、マーニスは、緊張した面持ちで並んでいた。
「アニメ円盤の店舗特典とフェアの報告以外、口を開くな! 買ってもいない円盤の密林レビュー(☆一つ)を書く暇があったら前と後に『サー』を付けろ! 分かったか、腐れショタコン共!」
「「「「サー、イエッサー!」」」」
「ふざけるな! 大声出せ! konozamaを喰らったか!」
「「「「サー、イエッサー!!」」」」
「貴様ら雌豚が、俺の訓練に生き残れたら、各人が信者となる。アイドル声優に全ての給料とボーナスを捧げる17歳教の信者だ! その日まではウジ虫だ! この世で最下等の生命体だ! 貴様らは魔族ではない! 流行の過ぎたアニメの、配布し損ねた店舗特典以下の値打ちしかない! 貴様らは厳しい俺を嫌う。だが憎めば、それだけ学ぶ。俺は厳しいが公平だ。ジャンル差別は許さん。アニヲタ、萌えヲタ、腐女子を俺は見下さん。全て平等に価値が無い! 俺の使命は役立たずを刈り取る事だ。愛するライブの害虫を! 貴様らのヲタ芸が一糸乱れなくなるまでな! 分かったか、ウジ虫!」
「「「「サー、イエッサー!」」」」
「ふざけるな! 大声出せ!」
「「「「サー、イエッサー!」」」」
「そこのちびっ子、名前は?」
「サー、ルキフェル・スペルビアです、サー!」
「本日よりペタンコと呼ぶ! イイ名だろ?」
「サー、イエッサー!」
「聞いて驚くな、ペタンコ! 合宿所のテレビはライブBlu―ray(ブルーレイ)以外映らん!」
「サー、イエッサー!」
「二四時間三六五日、ヲタ芸の事以外考えられんようにしてやる!」
「サー、イエッサー!」
「他のウジ虫も覚えておけ!」
「「「サー、イエッサー!」」」
「ランニングに行くぞ、ウジ虫!」
「「「「サー、イエッサー!」」」」
ツナを先頭に四人は合宿所を出て行き………………。
「腕振り、1000回。始め!」
「「「「サー、イエッサー!」」」」
「タプタプの胸を何とかしろ、テンパりデブ!」
「サー、イエッサー!」
「恥じらうな! 恥じらいなんざ、思春期男子のティッシュ山盛りのゴミ箱に捨ててこい! もっと腕を振れ! ズレるのを恐れるな! モタモタするな、テンパりデブ! じじいのファックの方が、気合い入ってる! のろま! 動け! ペンライト落とすな!」
「サー、イエッサー!」
と、流れ続けるアニメソングをBGMに、ペンライトを握って腕を振り続け……。
「手拍子しながらの右回転ジャンプ、始め!」
「「「「サー、イエッサー!」」」」
「先走るな、ニャンコ!」
「サー、イエッサー!」
「ニャンコは、触れたらイっちまう早漏か! 先走り汁より先走るな! 周りを見るな! 空気を読め! 旋律に任せりゃ、身体が勝手に動いてくれる!」
「サー、イエッサー!」
と、更にその後は左回転ジャンプを繰り返し……。
「身体を捻って斜め上指さしからの、腕引き……始め!」
「「「「サー、イエッサー!」」」」
「形で覚えるな、鉄仮面!」
「サー、イエッサー!」
「スムーズに動け、鉄仮面! 貴様は機械か! 油が足んねーのか! 代わりに我慢汁を挿してもらえ、ポンコツ! 感情を出せ! ステージに向かって自分をアピールしろ!」
「サー、イエッサー!」
四人揃うまで延々続いた。
後世の歴史家によると、魔王軍飛躍のきっかけとなった『私立天陵学園の合宿』の詳細な内容については、どの歴史書にも残されておらず、当の魔王軍幹部が生涯重い口を閉ざしたままであったという。
魔王軍の歴史が、また一ページ。