第17回
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むらさきゆきや(作家)講評
タイトル、どんどん長くなっていきますね(笑)
今回も非常に作品の完成度が高かったです。
どこの新人賞もそうなのか、講談社ラノベ文庫の人気が上がっているのか……
レベルが上がっていると感じました。
【大賞】
シャドウ・アサシンズ・ワールド ~影は薄いけど、最強忍者やってます~
完成度が光りました。
文章、キャラクター、ストーリー、クライマックスどれも良いです。構成だけはちょっと気になりましたが。
シンプルでオーソドックスながら流行とツボを押さえており、新人賞の投稿作にもかかわらず、まるで書き慣れたプロの作品であるかのようでした。
また一人、追い抜いていきそうな新人さんが現れたなー……という印象です。
文章力は高めです。一読して、あらすじも本文も理解できましたし。
ちょっと形容詞が重い傾向にありますが、文体の範囲かなと。
構成はちょっと序盤がスローですかね。
最初のデカイのを倒して楽しくなるとこまで、文庫換算40P……けっこう長いです。
20Pまでには欲しい。理想は6Pです。
そのわりに、エピローグは尻切れです。書きたいところと読みたいところは違うもの。
著者は序盤で説明したがりますが、読者は幸せなアフターエピソードを味わいたいのです。
ストーリーは大変面白かったです。
一気に最後まで読んでしまいました。
キャラクターは主人公もヒロインも良いです。
好感が持てます。
敵側はちょっと典型的ですが……捻れば良いというものでもないですからね。
演出について、クライマックスは文句ないです。
しかし、その後があっさりしすぎです。
メインディッシュのあと、デザートが出てくる前に店から出されたような気分でした。
いや、読者によってはむしろ、仲よくなった2人のほうがメインかも。前菜だけで追い出された気分かもしれません。
【優秀賞】
猫のJKとサラリーマン
テーマに魅力がありました。
文章、キャラクター、ストーリーが良いです。クライマックスはもう少し納得感が欲しかったです。
ちょっと大人向けなテーマが、今のライトノベルらしく、良い意味で新人賞らしい作品でした。
粗さもあったので、磨き上げてもらいたいです。
文章力はある……けど、序盤は癖が強めですね。
一人称でこんなに「俺」が出てくる文体は、あまり見ないです。
途中から普通になって読みやすくなりました。
構成はテンポ良いです。
テンポ良すぎて、最初の夜が一瞬で終わって肩すかし感はありましたが……まぁ、ねちっこければ良いわけでもないので、これはこれで。
(これは古い考えかもしれませんが――)文章が一人称であれば、よっぽどの理由がないかぎり視点は主人公から外さないほうがいいですね……まして神秘の側のシーンを書いてしまうのは……どうでしょうね?
ストーリーは面白いです。
ちょっと設定に寄ってる感じはしますが、青春モノの王道を踏んでいて楽しめました。
キャラクターは主人公もヒロインはサブも良いです。
バステトはもうちょっと神様然としても?
クライマックスは……さすがに物足りなかったです。
もうちょっと納得感が欲しかったです。
【佳作】
幼馴染を親友に寝取られた俺。これからは元親友の妹とイチャイチャしていきたいと思います!
エキセントリックなテーマの作品かと思いきや、キャラクターもストーリーもエキセントリックでした!
文章は良いです。
作品の評価はどこに視点を置いて、どういう心持ちで受け取るかで全く変わりそう。
面白い試みですが、パッケージは悩むでしょうね。
文章力は高いです。
3人以上いる場面が多いのに、読んでいて混乱することが少なかったです。
ストーリーは……どう解釈すべきなのか、悩ましいです。
わかりやすいようで、よくわかりませんでした。
とにかく、エキセントリックですね。
ラノベを読んだというより、大学時代にドロドロ話を聞いたときみたいな感想を持ちました。
そういう需要もあるかもしれません。
今回受賞されたみなさんの、今後のご活躍を期待しております!
2023年9月8日 講談社ラノベ文庫編集部