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ポーション頼みで生き延びます!

著:FUNA イラスト:すきま

異世界転生1周年!

今日で、私がこの世界、ヴェルニーに転生してから、丁度1年。つまり、1周年だ。
 転生した日を15歳の誕生日ということにしているから、今日が私、『この世界の住人、カオル』の誕生日。つまり、16歳になったわけだ。
 この世界の女性の結婚適齢期にはいっているけれど、締め切りまでには、あと8年ある。
 ……いや、確かセレスは、『23あたりであせりまくり、24で後がない』とか言っていたな。そんな締め切り間際の、子供の夏休みの最終日みたいなのは嫌だ。あせっては、碌な事がない。変なのを掴んだら大変だ!
 ここはひとつ、充分な余裕を取って、20か21には勝負を決めておきたい。ならば、18くらいで相手を見つけて、お付き合いを始めなければ……。
 この世界では、男女の交際期間というものが、極端なのである。
 幼馴染みとか、子供の頃からの婚約者とかで、交際期間十数年、というロング組。
 そして、出会ってから僅か数ヵ月で結婚するという、ショート組。
 成人してからの出会いで、何年もダラダラと交際を続ける者は少ないらしい。
 どうやら、この世界では人間が結構簡単に死ぬから、少しでも早く子供を、ということで、互いの両親達が急かしまくるのが原因らしいが……。
 でも、私は、せめて2~3年はゆっくりと交際して、互いに見極めたいと思うんだよねぇ。
 それに、甘々の恋人時代を満喫したい。年齢、イコール彼氏いない歴の名に懸けて!
 ……本当に、どうして今まで男っ気が全く無かったのだろう。
 いや、美女だとは言わないが、そんなに酷くは……、って、眼付きか! それとも胸か! コンチキショーめがああああああぁっっ!!

 ……はぁはぁはぁ。
 いかん、思い出したくないことは忘れよう。
 とにかく、転生1周年の今日は、ひとつ、この1年間を振り返ってみることにしよう。

 1年前、地球を管理している『神様のようなもの』である高位生命体のミスで死んだ私は、お詫びとして、この世界に転生させて貰った。
 転生とはいっても、生まれ変わって赤ん坊から、というのではなく、少し若返った状態で再構成された肉体に魂と意識体を入れて、という、異世界転移と異世界転生の中間のような感じのやつだ。
 そしてそれを引き継いでくれた、転生先であるこの世界の管理者、セレスティーヌ。
 いつもは人間との会話用にと思考形態や思考速度を極限まで低下させた分身体で相手をしてくれており、そこを衝いてもぎ取った、ポーションとその容器を自由に作成できるというチート能力。
 いや、チョロ……、いい交渉だったな、うん!
 そして、ポーションの力で病気や怪我の心配もなく……、いや、一発で即死、とかはどうしようもないけど、まぁ、病気や怪我で苦しみながら、という心配はなく、小さなポーション屋でも開いて、のんびりとささやかな幸せを、という、完璧な生活設計!
 何しろ、製造原価ゼロ、従業員は私ひとりだから人件費もゼロ、薬の効き目は自由自在。お店兼住居の賃料と生活費以外が必要ないから、他のポーション屋に負ける要素がない。勝ち組、確定!
 それが、どうしてこうなったあああぁ~~!!

 ……いや、落ち着け、自分!
 ひっひっふー、ひっひっふー……。

 とにかく、夢のポーション屋が文字通り夢に終わり、その後は、ある時は眼付きの悪いウェイトレス、ある時は眼付きの悪い住み込み家政婦、またある時は眼付きの悪い御使い様……、って、うるさいわ!
 全部、『眼付きの悪い』かよ! はぁはぁ……。

 とにかく、ウェイトレスと家政婦と戦争屋と御使い様は卒業して、今はポーションの卸しと、アビリ商会と組んで新製品開発をしているブランド『かおるん』の開発担当、そして孤児達の生活指導に勤しんでいる。
 ポーションの卸しは、アリゴ帝国まで届けられるよう日保ちを少し良くしたから、2日に1回で済むようになっている。
 いや、私がちょっと遠出していて1日あいたその時に怪我人や重病人が出て、なんてことを想像したら、気が気じゃないよ。おちおち恋人と小旅行にも行けやしない。
 ……って、いませんよ! 悪かったね!! クソが……。
 まぁ、そういうわけで、ポーションの仕事は2日に1回、僅か1ミリ秒で終結する。
 『かおるん』の方は、週に1回、アイディアを提出すればいい。
 あ、『かおるん』というのはアビリさんが勝手に言っているだけで、製品はちゃんと『アビリ商会謹製』ということで売っている。……当たり前だ、誰がそんな恥ずかしい名前を広めるもんか!
 それを企んでいるアビリさんを、少し懲らしめてやらねばなるまい。少し髪が薄くなるポーションとかで……。

 そして、最後の『孤児達の生活指導』。
 これは、私がいなくなっても孤児達が生活に困らないよう、私が借りている家で自分達だけで暮らせるように鍛えているというわけだ。
 既にまともな仕事で充分な稼ぎがある孤児達は、もうお金には困っていない。何しろ、家賃は無料で、稼ぎは7馬力で、贅沢というものを知らない連中なんだから、未成年で給金が少なかろうが、大した問題じゃない。
 で、私はみんなに、掃除洗濯、料理に裁縫、詐欺師を騙し返す話術に加え、敵を物理的に、もしくは社会的、または精神的に葬る方法とかを教え込んだわけである。
 そしてそれらも概ね教え終わり、今では、ほぼ『温かく見守っているだけ』なのである。朝から晩まで、何もせず、ただゴロゴロしつつ……。
 人、それを『ニートの寄生虫』と呼ぶ。
 ……って、うるさいわ!

 転生してからの、半年間に亘る逃亡と転職の日々。
 そして、戦争。
 多くの兵士が死に、英雄が生まれ、国が滅び、伝説が生まれた。
 それ以降の半年は、まぁまぁ平穏。どこかの第一王子とか、その使いとか、王太子の座を狙う第二王子の手の者とか、色々来るけれど、まぁ、概ね平穏だ。

 婚活の第一締め切りまで、あと4年。第二締め切りまで、あと6年。最終締め切りまで、あと8年。そしてその後に、真の締め切り、陰の締め切り、闇の締め切りと続く。
 なぜ締め切りを破るのか?
 それは、そこに締め切りがあるからだ!!
 ……いかん、少々錯乱した。
 とにかく、あと4年くらいは、地道に婚活しつつ、のんびりしよう。
 お金は、ポーションの代金と『かおるん』商品のパテント料で、結構貯まっている。もし孤児の子供達に何かあっても、そう困るようなことはないだろう。だから、今しばらくは、このぬるま湯の中で家族ごっこを続けるのも、悪くない。それも、どうせあと数年で終わるのだから。
 成人すれば、孤児も何もない。それはもう、親に先立たれたというだけの、普通の大人であり、社会人だ。そしてこの国では、成人年齢は15歳と、日本より遥かに早い。
 皆、そのうち次々と成人し、ここから巣立ち、独立するだろう。そして下手をすると、私より早く結婚し、増殖する者もいるかも知れない。その時は、私もまた……。

「カオル様、ごはんできたよ~」
「は~い」

 今日が私の誕生日だということは、みんなには秘密だ。
 理由?
 誕生日だって言えば、絶対に『何歳の?』って聞かれるに決まってる。
 そして、16歳だと言えば、驚かれて、色々と根掘り葉掘り聞かれるに決まってる。お祝いのパーティーを、とか言われるのも、面倒臭い。
 サバ読んで、もっと低年齢で申告したら、婚活まであと数年待たないといけなくなる。逆に、高年齢で申告なんかしたら、もっと驚かれる上に、結婚適齢期の締め切りが早くなる。そんな馬鹿なことができるはずがない。
 結局、年齢は秘匿し、年齢が話題に上るキーワードである『誕生日』は、秘密にしておくのが無難だろう。キーワードも出ていないのに女性に年齢を聞くような無礼者は、そうそういないだろうから。
 今の私は、精神年齢23歳と半年。内緒ではあるけれど、公称肉体年齢16歳。そしてこの肉体の実年齢は1歳丁度の、ピチピチの女の子だ。
 ……うるさい、誰が何と言おうと、『ピチピチの女の子』なんだよ!
 そして、ある程度の年齢になったら、公称肉体年齢ではなく、肉体の実年齢の方を名乗るのだ。15歳ほど若くなるが、嘘ではない! 決して、嘘ではないのだ!!

 よし、明日からまた、心機一転、婚活、頑張ろう!
 そして、我が長瀬一族の遺伝子を、この世界に増殖させるのだだだ!!

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