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第2回 講談社ラノベチャレンジカップ

講 評

  • 杉井 光(小説家) 講評

    二回目の選考となります今回は、四本の作品を読ませていただきました。全体的な傾向として、やりたいことはわかるのだが力の入れどころを間違えている、という惜しい点が目立ちました。紙幅は有限ですし読者の時間も有限ですから、いかに最大効率で面白さを引き出せるように話を組み立てるか、は重要な課題です。しかし最終選考作のほとんどが、あらすじから期待した面白さと関係のないところにエネルギーを使ってしまっていた印象です。

    異世界召喚もののファンタジーである『ストレンジ/エッジ』は、迫害されていた魔女、伝説に残る聖女の功績、といったガジェットはよいものの、作中のかなりの文章がストーリーにあまり貢献しない設定語りに使われてしまっており、しかも肝心の魔女の迫害されている様子や主人公が異世界に召喚された後の心理変化などが描かれていないので、設定をどれも生かせずに終わってしまっています。ただ、どんでん返しをきちんと作ろうという気概は好感が持てましたので佳作に推させていただきました。

    妹ものラブコメ『リディの恋愛必勝マニュアル』は、あらすじ時点での期待度はかなり高かったのですが、妹が一所懸命作成したズレた恋愛マニュアルを必死に実行する――という構図のわりにはこのマニュアルがだいぶ普通で、この設定ならもっと笑いどころを作れただろうに、ともったいなく思えてしまいました。妹の対抗馬となるヒロインも魅力が薄いというかほとんど印象を残せなかったのも厳しい点です。しかし話の肝はよくできているので、改稿すればどんどんよくなるだろう、ということでこれも佳作といたしました。

    機械少女バトルものの『Die maschinen Fräulein』は最も力の入れどころを間違えてしまった作品で、主人公とヒロインに魅力があまり感じられないというよりも描写そのものが圧倒的に少なく、対してライバルとそれに仕える機械少女の主従には随所の過去回想も含めてたっぷりと描写が用意してあり、こっちの二人を主役に据えればよかったのでは? と選考会でも見解の一致をみました。また実質この二組の対決しか描いていないので長編としてはボリューム不足であり、やはり大幅な加筆が必要だろうということで佳作となりました。

    そんな中、きちんと目指す方向に注力できていたのが大賞の『女子には誰にも言えない秘密があるんです! ~双子だから倍だけどねっ~』です。完璧美少女の姉と妹、どちらにも秘密があって改善のために主人公とだけ秘密を共有、という構図はそれだけで話が転がるようにできており、事実最初から気持ちよく話が動いていきます。妹のズレかたの描写にも工夫が凝らしてあって楽しめました。ただ、ギャグのテンポが悪いのと、妹のキャラが非常識を軽く飛び越してひたすら頭が悪いように見えてしまうのは惜しいところです。そのあたりが改稿でよくなるように祈っております。

    ところで、今回だいぶ長めの作品が多い印象でした。そこで、次回から選考委員を外れる身ながら、わりと無責任なお話を選考会の最後にさせていただきました。
    僕もかつては投稿者だった身です。枚数上限に合わせて作品を削っていくつらさは身に染みてわかっています(今回の大賞は実に見事に応募上限ぴったりの150枚でした。苦労が偲ばれます)。投稿者としては上限は多ければ多いほどいい。多ければ多いだけ、「他に投稿するあてのない作品」が集まりやすくなるのではないか。そこでいっそ思い切って上限なしにしてみてはどうか?
    編集部の方々からは当然のように異論がありました。限られた枚数の中にきっちりとおさめるのもまたプロの要件ではないでしょうか、という意見です。これはまったくその通りです。読み切って満足できる一冊の文庫本、という形の商品にしなければいけない以上、枚数を一定範囲内におさめることは絶対に意識しなければいけません。
    しかし、世の中には、400ページや500ページでなければ描けない物語というのがたしかに存在するのです。同じ内容が伝わるのであれば、たしかに枚数は少なければ少ないだけ話が濃く強くなります。それでも最低限必要な枚数というものはあり、その枚数を決めるのは作者でもなく編集者でもなく物語それ自体なのです。

    ……と、次から選考をしなくていい気楽さも手伝って熱弁をふるってみたところ、チャレンジカップだし編集部の方もチャレンジしますか、というノリで話が決まってしまいました。ライトノベル業界では初かもしれない、上限枚数無しの賞の誕生に立ち会えたことを喜びつつ、次回から選考を担当される竹井10日氏には深く深くお詫び申し上げます。すみません。もしビルみたいな高さの応募原稿が最終選考に残ってしまったら僕のせいです。
    でも、枚数上限無しなら選考委員報酬も上限無しじゃないですかね……?

    それでは、応募してくださったみなさま、ありがとうございました。

  • 渡辺 協(講談社ラノベ文庫編集長) 講評

    第2回講談社ラノベチャレンジカップに多数の応募を頂き、ありがとうございました。

    繰り返しになりますが、チャレンジカップは隆盛を呈するライトノベルに、まだまだ未知の面白さが埋もれていて、より広範な題材の、より新鮮な内容の作品、作家を生み出せる余地が十分にあるという考えから創設したものです。毎月多数の新刊・新シリーズが生まれているライトノベルにあっても、さらに面白い作品を提供する新人作家を見いだそうと生まれた賞です。
    その思いを叶える様に第2回も、実際にチャレンジングな内容をいくつも読ませて頂き、審査の醍醐味は存分に味あわせて頂きました。
    最終的審査では、そういった作品から4作品を選ばせて頂き、選考委員・杉井光さんとラノベ文庫編集部による審査をいたしました。
    結果はすでに発表の通り、大賞1作品、佳作3作品となりました。
    第1回発表の際にも示しましたチャレンジカップの評価方法に準じまして、応募作中、もっとも優れた作品を大賞とし、他の3作品は可能性を高く評価して佳作受賞としました。受賞者の方々を心からお祝いします。
    しかしながら、今回の審査を通じまして、より挑戦的な意欲や作家的な可能性を発現するために、もしかしたら原稿の枚数制限は無い方がいいのではないか、という仮説が提示されました。編集部は協議した結果、やや冒険的かとも思いましたが、ここで第3回からは原稿枚数の上限を無くす事にいたしました。とは言え発表形態は変えられませんので、そこは考慮しての投稿をお願いします。また、同時に枚数制限の下限も少し下げて80枚とさせて頂きます。
    いままでと同様に、大賞・佳作受賞作品は可能な限りラノベ文庫での出版を目指します。従って、本当の意味で選考作品への真の評価を下すのは、読者の方々という事になります。真摯にして苛烈な評価をお願いします。
    新たな応募者の方々にも、応募途中ですが仕様が変わった次回の第3回講談社ラノベチャレンジカップへの挑戦をよろしくお待ち申し上げます。

2013年3月13日  講談社ラノベ文庫編集部

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